第18回東京国際映画祭 トミー様舞台挨拶ルポ

 2005年10月25日、VIRGIN TOHO CINEMAS六本木のScreen7にて、特別招待作品『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬(仮題)』を観てまいりました。メモにも限界があり、おまけに体内アルコールがすでに高濃度だったため、細部まで再現しきれていませんが、まあ、雰囲気だけでもお伝えできたらなしたいな、と。トミー様のことばは、わたしの脳内で変換された日本語になっていますです。正式なものは、そのうち公式でアップされるでしょう(※まとめているうちに公式サイトにすっかりレポートがアップされてしまいました→こちら。さすが当サイトは仕事が遅い。わはは)。

六本木ヒルズに到着するなりビールとワインをしこたま胃におさめてしまい、ばっちりレポートするぞという意気込みは消え去り、酒臭い息で会場へ。しかもワイン片手に着席。飲み食いしながら鑑賞できる東京国際映画際に乾杯。16時17分、あと数分ではじまるというのにやたらと空席が目立つ会場。みんなギリギリに駆け込んでくるのよ、と心の中の黒い不安を必死に打ち消しながら、ふと舞台袖へ視線を向けると、開いた扉の向こうにはスタンバってるトミー様が。さすがはハリウッドスター、やたらと目立つ。舞台に上がってもいないのにあれだけ目を惹くのは、もちろんスターのオーラが出ているからであり、間違っても体がデカイからだけではない。そして開演時間の16時20分、まだ着席していない観客がうろうろするなか、舞台上に司会の襟川クロさん(以下敬称略)と通訳の女性が登場。

襟川 「名優トミー・リー・ジョーンズさんにとって、はじめての劇場用監督作品です。にもかかわらず、第58回カンヌ映画祭では主演男優賞、そして脚本賞の二部門を受賞しました。それではお迎えしましょう。第18回東京国際映画祭特別招待作品のなかで最も注目の一本ですメルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』の監督、主演、ミスター・トミー・リー・ジョーンズ!」
拍手の中、トミー様が舞台に登場。大物ハリウッド俳優の登場にもかかわらず、特別な趣向はなく、舞台中央へトコトコ歩いてくるトミー様。ファンファーレとまでは言わないが、せめて音楽でもかけてくれたら良かったのに、と映画祭の演出を残念がりつつ、すかさずピーコのファッションチェック開始。濃いグレーのピンストライプのスーツに赤系のネクタイ、シャツは白地のストライプ。襟の開きが大きめなのにネクタイの結びが細いのがちょっと貧相かもしれない。でも大丈夫よ、トミー様。観客の視線はスーツのあわせが引きつっているウエスト部分に釘付けだから。見事な太っ腹。“ビール腹・オブ・ザ・イヤー”。嫁、ちゃんと夫の体型管理してやれって。
TLJ 「この映画祭へお招きいただき大変光栄です。またお越しくださったみなさん、ありがとうございます。これからご覧いただきます映画には、馬とラバと大きな帽子が出てきます。砂の山々や広大な景色が出てきます。多くのかたは、この作品を西部劇だとお思いになるでしょう。しかしわたしとしては西部劇にカテゴライズしていただきたくないと思っています。わたしは日本に古くからあるビジョアル的な伝統に敬意を払っています。その伝統は、アメリカの映像に影響を与えています。この作品をご覧になって、歌舞伎の舞台セットを思い浮かべるかもしれません。あるいは黒澤明監督の映画のワンシーンを思い起こすかたもいるでしょう。それはこの作品の一番のテーマが“ボーダー”、“国境”だからなのです」
ここまでのスピーチ、手に持っていたメモを読みっぱなし。一文一文区切りながらのスピーチは通訳者への配慮なのだろうが、どうみてもやっつけ仕事をこなす無愛想なハリウッドスター

襟川

「せっかくハリウッドからお越しいただいたのですから、少し質問させていただきましょう。まず、この作品を監督をすることになった経緯を教えてください」
TLJ 「良き友人である脚本家のアリアガとともに、この題材に大きな興味を抱きました。アメリカとメキシコの間にはリオ・グランデという川が流れています。メキシコ側の人たちは、川の向こう側が自分たちのものだと思っており、アメリカ側の人間も同じことを考えています。そんな状況の歴史や現在、未来を描きたいと思いました。そして、すばらしい脚本が出来あがったのです」
瞬間、会場が静寂につつまれる。すべての観客が心の中でこう思っていたはず。「質問の答えがずれてるぞ、おっさん」と。すかさず司会者がフォローを入れる。「そこで、自分が監督しようということになったのですね」
TLJ 「……Yes…………yeah」
愛想もミソもない返答に、観客から思わず笑いが起きる。このちぐはぐな問答があとどのくらい続くの? 通訳のタイミングもいまひとつだし。このままでいくと会見嫌いのトミー様、星一徹ばりにちゃぶ台ならぬ、ポスターと台座をひっくり返してしまうかもしれないわ(内心、わくわく)。

襟川

「監督だけでなく主演もされていますが、このふたつを同時に進行するのはもともと計画していたことなのですか」

TLJ 「映画に関していろいろなアイデアやビジョンについて話し合いを重ね、すばらしい作品になると感じました。そうなれば監督としては当然、良い俳優を使いたいと考えていたところ、そうだ、安く使える俳優がひとりいるじゃないか、と思い至ったわけです」
真顔で放つジョークに、観客席からふたたび笑いが起きる。

襟川

「人間の心情を描いた作品になっていますが、実話が入ってるのでしょうか」

TLJ 「この作品は自伝ではありません。あくまでもアートであり、エンターテインメントだと思っています。ですが、フィクションだからといって本物ではなはいというのではなく、優れたフィクションならば真実を描くことができるのです」
事前にちょっと調べればわかるような質問にも礼儀正しく返答してくれたトミー様。ただしかなりの無表情。司会者の身の安全のためにも、もう質問は止めといたほうが無難かと……
襟川 「それではフォトセッションにうつらせていただきます。で、お願いですが、さきほどから写メ撮ってる一般のみなさん! ここからはプロフェッショナルな方の撮影の時間です! しまってください!」

どさくさにまぎれて写真を撮りまくる観客に対し、ついにキレる司会者。しかし一向に効き目なし。観客たちは自席を離れ、撮影隊に混ざってシャッター切りまくり。撮影禁止にしたいのならば、プロだろうが素人だろうが会場には一切カメラの持込を禁止するべき。観客のモラルも疑うが、映画祭側も厳しく取り締まるつもりがないなら文句言わないで欲しい。カメラを構えていなかった人間までもを不快にさせたこの発言が通訳されなかったことは不幸中の幸い。こんなレベルの低いやりとりはトミー様に知られたくない。観客と司会者の間に突如流れ始めた不穏な空気をよそに、トミー様は舞台の最前列に構えるカメラマンに自ら指示を与えながら、右から左へカメラ目線を動かしていく。さすがプロの俳優、カメラへは笑顔を向ける。仕事きっちり。

「さすが監督ですね。(カメラマンたちに)自ら指示を送っています」

TLJ 「これくらいのこと朝メシ前だ」  
襟川 「後方にムービーのカメラもありますのでそちらにもお願いします」
TLJ 「(劇場後方のビデオカメラクルーへポージングしながら)カメラはとにかく、ビデオまで撮ってるのか?」
襟川 「はい、どうもありがとうございました〜!」

16時32分、舞台挨拶終了。トミー様舞台袖へ向かうも会場から出て行く様子なし 奥様、関係者とともに客席へ。どうやら観客と一緒に映画を観るらしい。

襟川 「本当に存在感のある俳優さんです。ではこれから特別招待作品のなかではもっとも早くチケットが売れてしまったという話題作『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』をご覧いただきましょう。ちょっと、皆さん聞いてます? トミー・リーさんばかり見てるけど。作品の公開は来年の春の予定です。ああ、もうみんなぜんぜん聞いてない。トミー・リー・ジョーンズさんとご一緒にご覧になるゴージャスなひとときですね」
後部席へ移動するトミー様。なんとなくヨロヨロしてるように見える。もしかして足腰弱ってる?
襟川 「みなさん、上映後は拍手をわすれないように

なんて親切なご忠告。もしくは大きなお世話とも言う。さて場内も暗くなり、上映間際のトミー様の反応を盗み見る。舞台ではあれほどつまらなそうにしていたのに、いまやすっかりご機嫌の様子。笑顔まで浮かべている。人によっては怖がるかもしれないこの微笑だけど、わたしには天使の微笑よ。ああ、殴られてもいい、舞台の中心で叫びたい。「ワット・ア・キュート・ユー・アー!」と。

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『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬(仮題)』上映
感想:なるほど、あちこちの映画祭で賞をとりそうな作品だな、と。いや、変な意味じゃなくて。日本で公開するって言ってたけど、たぶん単館上映だな、と。いや、悪い意味じゃなくて。少なからずジョーク(かなりブラックなもの)が織りまぜてあり、日本と欧米との観客の反応が相当異なるのではないかな、と。だから今回、わざわざ一緒に観たのかしらん?
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作品中、ヴィクトリアちゃんが出てくるシーンが一箇所あり、「あ、今トミー様ファンはチェック入れたな」などと考えておりました。

エンドクレジットからなりだした拍手を聞きながら、立ち上がるトミー様。奥様、関係者とともに出口へ向かう。観客へ軽く手を振ってハイ、サヨウナラ、かと思いきや、階段を下りる手前で立ち止まり、観客へ向けて何度も深々とお辞儀をし、笑顔で会場を去っていかれました。


というわけで、トミー様が撮り、トミー様が主演した作品を、トミー様と同じとき、同じ場所で、同じ空気を吸いながら観る、というファン冥利に尽きる経験をさせていただきました。めでたしめでたし。

(2005年10月29日)