日独写真機商店(現:ミノルタ) 1929年 127mm(ベスト判カメラ)

 


 

 1929年製のベスト判カメラです。

 このカメラは現在のミノルタが出した第一号機です。

 当時、日独写真機商店という会社名でした。

 ニフカレッテと言う名は、会社名の頭文字「Nichi-doku Fotography Camera」と小さいという意味の「レッテ」を加えて付けられたそうです。

 このカメラは、今では市販されていないベスト判と言われる127mmのフィルムを使うカメラです。

 フィルムを巻く軸が細いために小型化が実現できたそうですが、軸が細い分、フィルムに巻き癖が付いてしまいピントが均一に合いにくいなどの問題があり現在では一部を除き製造されていません。

このカメラは、以前にレストアを実施しているので、報告のみとなります。

 


 

(1)ボディをチェック (2)シャッター部・レンズ部 (3)その他、操作方法
(4)127mmフィルム (5)シャッター速度測定

(6)テスト撮影

(7)あとがき

 


 

(1)ボディをチェック

 

このカメラのレストアは簡単でした。肝心なシャッターは動いていました。

したことは、剥がれた革をボンドで付け直したことと、カビたレンズの清掃。そして、ホコリと少々のサビを落としたことです。

正面の板だけサビが出ており、革も剥がれていたのでサビを取ってからボンドで張り合わせました。

レンズの清掃は、「OLYMPUS EEクリーナー」を用いて行いました。サビは大きくなかったので、CRC556で拭き取りました。

ボディの革は全面的に少々剥がれていたので、ボディを清掃した後にボンドで張り合わせました。

大きな部品の破損も無く、年代からしてはとても状態のいい機体だと思います。

 

 レンズを収納しているときは、非常に小さいボディです。8mmテープと比較するとその大きさが分かると思います。今のコンパクトカメラと同じくらいか、ちょっと大き目の大きさです。

レンズ収納時のボディ

 

 TOPパネルの革には「Nifcarette」と刻印があります。私もこの刻印で、カメラの名前が確信できました。

革の刻印

 

 


 

(2)シャッター部・レンズ部

 

 レンズは「Wekar-Apranat(ウェッカーアプラナーテ)」75mmF8を搭載しています。

 シャッターは「PRONT(プロント)」製で、T、B、1/25、1/50、1/100秒を装備しています。

 ファインダーは、上部についているブリリアント形式のものです。斜め45度にミラーが入っている至って簡単なつくりです。

 それにしても撮影には少々物足りないスペックですね・・・(苦笑)

レンズ・シャッター・ファインダー

 

 焦点合わせは目測で、レンズ脇にあるメータメモリで合わせます。かなり大雑把なので、きちっとしたピントが合わせにくいと思います。

焦点調節部

 

 


 

(3)その他、操作方法

 

 側面の上部にあるフック状のものは、フィルムを巻き上げるためのものです。

 その下にあるのが、レンズを出すためのボタンです。

 その下の穴は三脚取り付け用のネジ穴です。

側面1

 反対側の側面には、フィルムを装てんするために蓋を開けるスライド型のフックがあります。「A」の状態にするとボディをスライドして開けることが出来ます。「Z」にするとロックがかかりボディはあけることが出来ません。  

側面2

 

 真ん中に見える窓は赤窓(裏窓)といいフィルムの撮影枚数を確認するのに使います。

 127mmフィルムは中判の120mmと同じでフィルムに裏紙が付いています。この裏紙に数字が印刷されています。

 フィルムを装てんする際、この裏紙に印刷された数字を頼りに巻き上げていきます。はじめは、赤窓に「1」が来るまで巻き上げます。1回目が終わったら、赤窓が「2」と表示するまでフィルムを巻き上げます。以後、3、4・・・と続きます。

背面

 

 

 


 

(4)127mmフィルム

 

 これが、ベスト判で使う127mmフィルムです。現在、日本では製造されていませんので輸入品に頼るしかありません。ブローニーフィルムから、切り出して使うことも出来るようですが、私はやったことがありません。

 今回、幸いにも某カメラ店で店員さんと話をしている中で127mmを譲ってもらいました。

 製造はクロアチア製です。感度はISO200/24°となっています。箱には「JESSOP BLACK&WHITE NEGATIVE FILM R200 127」とあります。

127mmフィルム

 現像後のネガは左のようなものです。通常のネガとはまったく違う色をしています。そして、フィルムを巻いている軸が細いせいか巻き癖が強いです。 

ネガ

 

 

 


 

(5)シャッター速度測定

 

シャッター速度測定器を製作したので、このカメラのシャッター速度も計ってみました。

 

Table.5-1 Nifcaretteシャッター速度

カメラ設定値[s]

LCD表示

1回目[s]

2回目[s]

3回目[s]

4回目[s]

5回目[s]

平均

誤差率[%]

1/25

開放時間

0.0485

0.0486

0.0495

0.0471

0.0481

0.0484

17.3

シャッター速度

1/20

1/20

1/20

1/21

1/20

1/20.2

23.8

1/50

開放時間

0.0325

0.0319

0.033

0.0347

0.0325

0.03292

39.2

シャッター速度

1/30

1/31

1/30

1/28

1/30

1/29.8

67.8

1/100

開放時間

0.0268

0.0276

0.027

0.0262

0.0256

0.0266

62.5

シャッター速度

1/37

1/36

1/37

1/38

1/39

1/37.4

167.4

 

Fig.5-1 Nifcaretteシャッター速度誤差率

 

これらを見るとかなり、表示値からかなりズレていることが分かります。

実際のところ1/40sがこのカメラの最大シャッター速度といったところでしょうか。

どうりで、撮影した写真が真っ白に露出オーバーになるわけだ・・・(苦笑)

 


 

(6)テスト撮影

 

カメラのレストアが完了した段階で、テスト撮影をしました。個々の写真は拡大できます。

 

 

 テスト撮影は、私が幼いころから通っている地域の児童館で行いました。

 左写真の被写体は、鉢入りの金柑の木です。ピントが甘いというのは言うまでも無いですが、それがまた良い味を出しているように感じます。1mの接写だからなのか、わりあい綺麗に写っていると思います。

撮影〜その1〜「金柑」

 

 管理人です(笑)一応、顔は隠しておきます(爆)まだ若いなぁ・・・(笑)

 画面の中心はまだしも、周辺がかなり流れています。壁や柱の直線が歪んで写っています。背景のボケも硬いように感じます。

撮影〜その2〜「管理人(笑)」

 

 私に工作&カメラ・撮影を教えてくれた知人です。個人なので顔は隠します(笑)

 写真の右側に反射像のようなものが写っています。レンズに反射防止のコーティングが施されていないのでしょう。

 写れば良しの観点で見ればOKなのですが、レンズの性能としてはかなり悪いです。年代を考えれば上等だとは思いますが(笑)

撮影〜その3〜「知人」

 

 


 

(7)あとがき

 

古いカメラの割には状態が良かったため補修程度で撮影可能になりました。

詳しくは分からないのですが、ニフカレッテはいくつものバージョンが存在しているようです。

レンズは、「ウェッカーアナスチグマット」「クセナーアナスチグマット」「アプラナーテ」があり、

シャッターは「プロント」「イプソール」「コンパー」「バリオ」などを搭載したモデルがあるようです。

レンズは、75mmF6.3やF4.5を装備したものもあり、シャッターも1/200秒まできれるものもあるそうです。

また、ニフカレッテB型とD型には枠型透視ファインダーも装備されているそうです。

以上を踏まえて、私の所有しているニフカレッテを判断すると、枠型透視ファインダーも無いし、

レンズもF8と暗いし、シャッターも1/100秒までということから、劣化版なのではないかと思います。

詳しいことをご存知の方がいらっしゃいましたら、ご教授いただきたく思います。

写りに関しては、今(2003年)から74年も前のカメラなので、写っているだけ上等だと思います。

周辺の光量落ちや歪みは誤差のうちだと思います。また、その歪みなどが年代物の良さなのだと思います。

なにより戦時中よくぞ生き残ってくれた!!(喜)

 

参考文献

“マニュアルカメラシリーズ15 「ミノルタカメラのすべて」 エイムック735” 株式会社竢o版社 p132 (2003-09-30)

 


 

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