大成光機 1947年 120mm(セミ判スプリングカメラ)

 


 

1947年製のスプリングカメラです。このカメラのファインダーは2つあって、1つは透視式、もう1つは反射式です。

レンズは3群3枚でTerionar75mmのF3.5です。焦点合わせは、前玉回転式の目測です。

フィルムは120mmの6×6です。フィルム送りはノブ式で赤窓で枚数を確認します。

シャッター速度は、バルブ、1〜1/200秒です。このカメラはすべて自社製で作られているそうです。

今回は、このカメラをレストアします。

 

 


 

作業工程

 

(1)とりあえずボディをチェック (2)シャッター部・レンズ部を分解
(3)蛇腹を修復 (4)筐体のサビを落とす
(5)塗装をして革を張る (6)修理完了!?
(7)修理完了〜♪ (8)シャッター速度測定
(9)テスト撮影 (10)あとがき

 


 

(1)とりあえずボディをチェック

 

前面 内部

写真では分かりにくいですが、

カメラの状態は、非常に悪いです。

サビが凄すぎです。

重要な、レンズがカビています。

そして、シャッターの切り替えダイヤルがまったく動きません。

 

これはいかに・・・(汗)

背面

 

 


 

(2)シャッター部・レンズ部を分解

 

 まず、シャッターが動かないことには話にならないので、ユニットを分解することにしました。しかし・・・油が固着しているのかまったく動きません・・・(汗)CRC556をかけてもビクともしません。カニ目回しという工具で開けるのですが工具が負けてしまいそうです。仕方が無い・・・

 強引技へ・・・。プライヤで回しました。すると、大きな傷も付かずに開けることが出来ました。こいつを開けるのに2日かかりました・・・^^;

強引・・・

 

 なんとか開けられたシャッターユニットでしたが、ここでも問題が・・・。赤丸の箇所でシャッターを切るときに爪が金具に食い込み、引っかかってしまい正常な動作をしないのです。

 この手の不具合は、食い込みが起きないように金属部を曲げてやればOKです。おそらく、長年の動作で接触部が磨耗してしまったのでしょう。

シャッターユニット内部

 

 シャッター速度を切り替えるダイヤルの裏側です。見事に油が固着しています。緑色に見えるのが固着物です。こんなに、こびりついていたら動きませんね。ベタベタします。家庭用洗剤とエタノールで綺麗に洗浄します。

 部品の洗浄が終わったらシャッター可動部に油を差してユニットに組み込みます。もちろん、シャッター羽と絞り羽も清掃します。

 レンズはOLYMPUS EEクリーナーで洗浄しました。少しはカビが薄くなりましたが、当然ながら完全には消えません。

シャッター速度切り替えダイヤル

 

 レンズを分解したときに分かった大まかなレンズ構成図です。あくまでも“こんな感じ”として見てください。

 レンズは全部で3枚です。前玉(一番前のレンズ)はピント調節用に回転するようになっています。ちなみに、回し過ぎると外れますので要注意(笑)2枚目のレンズの脇に小さなガラス欠けがありましたが、撮影には影響ないと思います。

レンズ構成

 

 


 

(3)蛇腹を修復

 

 さて、シャッターユニットの修理が終わったところで蛇腹の修理です。蛇腹は、表が革で裏が黒い布になっている2重構造の物体です。蛇腹は、カメラ収納時にコンパクトになる利点があります。しかし、穴が開くと光線漏れしてしまうので撮影できなくなります。

 

 修理はまず、シャッターを閉じたまま蛍光灯に向けて光が見えるかどうかで穴の有無を判断します。蛇腹部穴が開いていれば、光が漏れます。このカメラでは、光線漏れが確認でき、赤丸の箇所に穴を発見しました。これは、木工用ボンドで捲れた革の穴を塞いで様子を見たところ無事に塞がったので完了としました。

蛇腹上部に開いた穴

 

革靴用クリーム 蛇腹修復終了

 

 穴を塞いだら、革に付いている汚れを落とし、極力カビも落とします。そして、革用(革靴)の手入れクリームを塗って磨きました。そうすると、見事に真っ黒な輝きを取り戻しました。

 

 


 

(4)筐体のサビを落とす

 

 見える部分のサビも凄いです。手が赤くなってしまうくらいです。そして、革が浮き上がっています(汗)もしかして・・・と思い革を剥がしてみます。

 このとき、革と筐体の隙間にアルコールを流し込んでマイナスドライバーor彫刻刀の平刀を使って剥がすと綺麗に出来ます。

革を剥がす

 革を剥がしてびっくり・・・。サビが凄い・・・(苦笑)こりゃ・・・革が浮いてくるわけだわ。紙ヤスリで擦り、CRC556を使いながら根気よくサビを落とします。

革に隠れていたサビ

 

 両側の皮を剥がしてサビを落としていきます。いや・・・凄いサビです。これでもだいぶマシになったほうなんですが・・・^^;

両側の革を剥がす

 

 


 

(5)塗装をして革を張る

 

 サビが程よく取れたところで、塗装作業に入ります。本来、カメラの塗装は下地塗りをして本塗りなどをした後に焼き入れをするそうです。しかし、今回のカメラは蛇腹を外すことが出来ず焼き入れ工程が行えません。

 塗料として選んだのはアルミ建材用の油性塗料つや消しブラックを購入して行いました。しかし、これが後々悲惨な結果をもたらすとは・・・。筆で筐体の塗装すべき箇所に塗装を施します。

塗装後

 

 塗装の後は、革張りを行います。この革は、東急ハンズやヨドバシカメラ新宿西口本店で販売されています。

 まず、革を張る部分の型を取ります。型は筐体に紙を押し当てて鉛筆で淵をなぞるようにして行うと簡単に出来ます。型が出来上がったら革へ転写し切り取ります。貼り付けには付属の粘着シートで行います。

革張り後

 

 最後に、蓋の部分に遮光用のモルトを貼ります。今回は1mm厚のモルトを使います。裏面が粘着シートになっているので簡単に貼れます。

モルト張り後

 

 


 

(6)修理完了!?

 

 革も張ってレストア完了かと思ったら・・・。レンズクリーナーで塗装が剥げた!!

成分表示を見るとアルコールが含まれていることが判明。こりゃ揮発性高い溶液が入ってれば駄目だわ。 色々調べて試してみたがあまり良いのが見つかりませんでした。

 

塗装が剥げた・・・(汗)

 

今まで試したのは、「カメララッカー」「車用ペイント材」「油性合成樹脂塗料(アクリル・ウレタン)」です。

そして、困っているときに塗装工の方に「フッ素系の塗料なら強いかもしれない」と教えてもらったので、早速購入して試してみました。

結果は、アルコール系の溶剤で軽く擦る分には消えませんでしたが、爪を立てるとやはり剥がれてしまいます。

でも、これが一番強かったので、今までの塗料を剥がし、フッ素樹脂配合の水性塗料で再塗装することにしました。

何か良い塗料を知っている方がいらっしゃいましたらご教授頂ければと思います。

 

 


 

(7)修理完了〜♪

 ようやく修理が完了しました。結構、日数がかかりましたが、上出来ではないかと思っています。ただ、シャッター速度があからさまに狂っているので注意が必要です。近いうちにシャッター速度の測定器でも製作しようかな。

全体

 

 シャッター速度は、バルブ-1/200秒です。Welmyの上にある三角矢印に合わせて設定します。

 ピントは前玉を回転させて合わせます。目測式ですのでファインダーでは確認できません。写真右側にある三角矢印に距離計を合わせて行います。

レンズ・シャッター部

 

 絞りは上部から行います。F3.5-22まで可変できます。

絞り

 

 軍艦部には「Welmy-Six」とロゴが入っています。どうやら、63244番目に製造された筐体のようです。また、軍幹部上部にはファインダーもあります。

軍艦部

 

 

 


 

(8)シャッター速度測定

 

シャッター速度測定器を製作したので、このカメラのシャッター速度も計ってみました。

 

Table.8-1 Welmy-Sixシャッター速度・時間計測

カメラ設定値[s]

LCD表示

1回目[s]

2回目[s]

3回目[s]

4回目[s]

5回目[s]

平均

誤差率[%]

1

開放時間

0.6412

0.6524

0.6443

0.6430

0.6394

0.6441

55.3

シャッター速度

1/1

1/1

1/1

1/1

1/1

1/1.0

0.0

1/2

開放時間

0.4031

0.4053

0.4117

0.4210

0.4215

0.4125

21.2

シャッター速度

1/2

1/2

1/2

1/2

1/2

1/2.0

0.0

1/5

開放時間

0.2797

0.2820

0.2855

0.2822

0.2862

0.2831

29.4

シャッター速度

1/3

1/3

1/3

1/3

1/3

1/3.0

66.7

1/10

開放時間

0.1154

0.0983

0.1136

0.1095

0.1134

0.1100

9.1

シャッター速度

1/8

1/10

1/8

1/9

1/8

1/8.6

16.3

1/25

開放時間

0.0244

0.0230

0.0231

0.0243

0.0234

0.0236

69.2

シャッター速度

1/40

1/43

1/43

1/41

1/42

1/41.8

40.2

1/50

開放時間

0.0293

0.0300

0.0315

0.0316

0.0315

0.0308

35.0

シャッター速度

1/34

1/33

1/31

1/31

1/31

1/32.0

56.3

1/100

開放時間

0.0204

0.0203

0.024

0.0205

0.0202

0.0211

52.6

シャッター速度

1/48

1/49

1/48

1/48

1/49

1/48.4

106.6

1/200

開放時間

0.0115

0.0114

0.0115

0.0117

0.0115

0.0115

56.6

シャッター速度

1/86

1/87

1/86

1/85

1/86

1/86.0

132.6

 

 

Fig.8-1 Welmy-Six シャッター速度誤差率

 

許容誤差範囲で動いているレンジもありますが、多くはとてもずれています。

撮影する際には十分注意する必要がありそうです。というか注意が必要です。

 


 

(9)テスト撮影

 

試しに1本撮影してみました。撮影は2003年10月7日(火)に行いました。

撮影場所は@〜B、Fが世田谷区立等々力児童館、C〜Eが等々力渓谷です。

@ F9.0 1/200s

@は、簡易的にレンズの歪みを見るためにフェンスを写しました。

当然ですが、赤い格子は撮影後に付け足したものです。

写真のフェンスと赤い格子が平行なら歪みが少ないと判断します。

この写真を見て分かるとおり、特に縦のラインで、フェンスと赤い線が平行になっておらず、フェンスが歪んで写しだされています。

つまり、レンズの周辺がかなり流れているということです。

やはり昔のカメラだしレンズも少ないのでこのようになってしまうのでしょう。

A F9.0 1/200s

 

B F5.0 1/200s

 

C F4.5 1/2s

 

D F6.0 1/2s

 

E F6.0 1/2s

 

F F3.5 1s

 

これらの写真から、このカメラのレンズは周辺の光量落ちが激しいことやレンズの歪みが確認できます。

年代やレンズ構成からすれば当然の結果ですが。

でも、十分撮影可能なカメラになりました♪

が・・・目測ピント合わせなのが残念・・・(苦笑)

 


 

(10)あとがき

 

かなり古いカメラだったので状態も非常に悪かったです。しかし、なんとか撮影可能な状態まで修理が出来ました。

これから、テスト撮影をしてみたいと思っています。

幸いなことに、このカメラで使うフィルムは現在でも製造されている物でしたので入手が簡単に出来ます。

テスト撮影の結果もまぁまぁな具合に写ったので良しとしましょう。

これだけ古いカメラでカラー写真が撮れれば十分でしょう。

 

 


 

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