(30)マルテレ・スタッカート(27Jan 2002)
ここに記事を追加するのは1年半ぶりとなってしまいました。ネタがないわけではないのですが、なかなか時間が取れなくて、もしも楽しみにしている方がいてたら(いるわけないか?)ゴメンナサイ。
ということで、今回はだいぶ前にある方からメールでお問合せ頂いて回答したメールをそのまま載せます(はっきりいって手抜きです)。
> 私はバイオリンを弾いているのですが、テクニックに関してどうしても
> できないものがあります。正式名はなんというのか知りませんが、
> 一弓で連続して行うスタッカートです。パガニーニのカプリ−スの
> 10番の出だしなどがそうです。弓の真中ではよく弾むので
> なんとか形にはなるのですが、長い連続したスタッカートをひく時、
> 先からひこうとするとうまくできません。できない場合は右腕を
> 痙攣させるようにしてもできると聞いたのですが、それもうまくいきません。
> なにかうまい方法があればぜひ教えてください。
さて、お問い合わせの件ですが、ぼくも改めてカール・フレッシュの本を読んでみました。よく「連続スタッカート」というようにひとくくりに言われることが多いのですが、実際には、
(1)フライング・スタッカート
(2)マルテレ・スタッカート
の2種類があると、フレッシュの本に書いてあります。(1)は文字どおり、弓が弦の上で飛ぶわけで、これは通常弓の中央で弾かれます。弓先や弓元ではできないと思います。頂いたメールから想像するに、カプリースの10番を(1)で弓先から始めようとされたようですが、それはかなり無理があると思います。この部分はやはり(2)のマルテレ・スタッカートで演奏することになると思います。「序奏とロンドカプリチョーソ」や「ホラスタッカート」にも出てきます。「ホラスタッカート」の楽譜は持っていないのですが、以前友人から借りたビデオでハイフェッツがダウンボーでマルテレ・スタッカートをやっていました。
マルテレ・スタッカートとは、弓が動いている最中に急激に圧力をかけて弓の動きを止め、次に圧力を抜いて弓を動かすという動作を連続的に行うものです。フレッシュは「圧力アクセント」または「圧力休止」
と言っています。
つまり運弓の際、圧力アクセントをかけて、強制的に弓の動きを止めてしまうわけです。そうすると圧力をかけた時に雑音が発生しますが、(「子音」という表現がされていました。)この雑音が聞こえることは、むしろ必要なことだと思います。雑音ばかり聞こえてもしょうがないでしょうが。通常のスタッカートと違う表情を付ける効果があると思います。おもしろい演奏効果だと思います。
ではその圧力はどのようにかけるのかというと、「前腕を廻転させる」とあります。これは肘から先を回転させるということで、ドアののぶを回すような動きになります。といっても角度的にはほとんど廻らないのですが。親指を支点にして人差指で弓身に圧力をかけることになります。人差指は弓身に深く巻き付く方がやり易いかと思います。
弓の持ち方として、ドイツ式は人差指の第1関節、フランス・ベルギー式は人差指の第1関節と第2関節の間、ロシア式は人差指の第2関節、の所で弓身を押えるのだそうです。ぼくの場合は、フランス・ベルギー式ですこしロシアよりという感じです。つまり、ドイツ式よりもフランス・ベルギー式またはロシア式の方が、人差指がより深く弓身に巻き付くことになるので、前腕の廻転による圧力が無駄無く伝わるようです。
練習方法としては、クロイツェルのエチュードの4番をやるといいと思います。その際、一音づつしっかりと廻転により圧力をかけて弓をストップさせるように心がけて下さい。最初はゆっくりで、徐々にスピードアップしていけばいいと思います。
腕や手首を硬直させて痙攣を起こして行う(ぼくにはできませんが)と非常に早くできるようですが、逆に遅くすることができないでしょうね。
一般的にはこのマルテレ・スタッカートはできる人とできない人がはっきりと別れるとよく言われます。有名なソリストでも出来ない人が
いるようです。ミルシュテインは不得意だったので、ロンカプでは弓を切っていたそうです。もともと楽譜にはそのような指定はないのですから、むしろ切って弾いた方が音楽的には好ましいのかもしれません。
しかし、上記したような機械的動作は練習すれば誰でもできるようになると思うのですが。。。あと、手首から先だけでトレモロをしながら、運弓するというやり方もありますが、これも結構難しいです。
ということで、あまりまとまりがありませんが、参考になりましたでしょうか?
(29)本番で上がらない究極の裏技(12 Jul 2000)
昔から、本番で上がらないようになるには、本番の数をたくさんこなす以外にないと言われてきました。それに練習不足で本番をむかえると、不安な気持ちから余計に緊張し過ぎて、思うように弾けなくなることもあります。
そこで本番前に、軽いストレッチ運動をしたり、スケート選手のように手をぶらぶらさせたり(下の(24)参照)、深呼吸したり、手のひらに「人」と書いてなめる(古いねえ)、などいろいろなことをやっている方を見かけます。しかし、これらの方法に比べもっと効果的な本番で上がらない究極の裏技が、最近あるテレビ番組で紹介されていました。テレビでやっていたので、ご覧になった方も多いかと思いますが。
それは、本番直前に洗面器に水をはって顔を10秒間つけるといういたって簡単なものです。これにより一時的に心拍数が下がり落ち着くというのです。効果は30分位は持続するとのことです。これは「浸水反射」といい、遠い祖先が海で生活していたためと考えられています。これは結構効果的かもしれません。自分は上がり症で折角充分な練習を積んできたのに本番で上がってしまって充分実力を発揮できない、とお嘆きのそこのあなた、騙されたと思って是非一度お試し下さい。なお、洗面器は本番に持参しなくてもお手洗いの洗面台の栓をすればできますが、タオルは用意された方がいいでしょう。
(27)ピッチカート(17 Nov 99)
みなさんはピッチカート奏法をヴァイオリン教師からきちんと教わったことがありますか? ぼくは全くと言っていいほど教わったことがないんですね。せいぜいシノザキの教本に出てくる程度でしかないんです。教本自体にもあまり詳しく載っていないようです。ところが実際の曲にはいたるところにピッチカートが登場してきます。もう少しピッチカートについて詳しい教則本があってもいいと思います(本当はあるけれどぼくが知らないだけなのかもしれない)。
今までいろいろなピッチカート奏法を見てきましたが、まとめると以下のようになります。
(1)親指(もちろん右手の)を指板にかけて弓を中指、薬指、小指の3本で握り、人さし指で弦を弾く。最も一般的なピッチカート。こつとしては人さし指はやや曲げて(見た目に丸くなるように)角度を付けて、斜前方に弦を引っ掛けて弾くようにするといいでしょう。
(2)通常の構えで弓を持ったまま人さし指だけ弓から離して弦をはじく。arcoとpizz.の切り替えを素早く行う場合。それと、人さし指を弦の上で往復運動してトレモロを弾くときもこのやりかたですね。
(3)中指を使って弾く。人さし指よりは比較的柔らかい音がするようですが、フォルテには向かないでしょう。
(4)親指を使って弾く。えっ!と思われる方もいるでしょうが、実は親指のピッチカートは音量のコントロールがしやすいとかミスタッチが少ないとか、いろいろいいことがあります。恐らく他の指と比べてもっとも柔らかい音がするでしょう。ビオラの人は結構使っていますね。チェロでは当然ですね。
(5)重音のピッチカートの時は、人さし指でG線側からE線側に向かって連続的に複数の弦を弾く。このとき弦を押えている位置に合わせて少し斜に(手前に引き寄せるまたは先の方に出す感じ)弾きます。アルペジオ風に弾くときも、弦に対してやや斜に連続的に複数の弦を弾くといいです。斜にすることで1音づつばらけるように弾くことができます。角度を付ければ付けるほどよくばらけます。しかしこれはあまり行っている人を見たことがないですね。
(6)親指、人さし指、中指、薬指のうち複数の指を使って、1本または複数の弦を同時に弾く。重音を完全に同時に弾くことができます。
(7)弓をどこかに置いて弦を弾く。ハイドンのセレナーデの伴奏などはヴァイオリンをギターのように構えて、親指や人さし指を使って弾くことがありますね。
(8)左手でピッチカート。超絶技巧ものによく出てきますが、オケの曲でもarcoから素早くpizzしなければならないときに、一時しのぎ的に使いますね。指先に肉が付いていないとなかなかできないでしょうね。
(9)バルトーク・ピッチカートは、弦を引っ張りあげて、指板に弦をバチンとタタキつけるようにします。やりすぎると調弦が狂います。
ピッチカートのこつは、左手の指で弦を押さえる圧力を強目にすることでしょう。そうすると弦の振動を長引かせることができます。特に指先の爪を立てた感じで押えると驚くほど長く、解放弦を弾いたように余韻が残ります(あまりやっている人はいませんが)。また、ピッチカートは、弾いた瞬間が最も大きい音で、その後急激に減衰してしまうため、弾いた直後にビブラートをかけないとビブラートの効果が出ないでしょう。弾く前からビブラートするつもりでいるぐらいがちょうどいいと思います。
ところで、テレビを見ていたら、あのラカトシュ氏が人さし指と中指を交互に動かして、まるでギターのトレモロのようにしてピッチカートを弾いていました。なんだああすればいいんだなと思いました。このようにピッチカート奏法は非常に種類が多く弾く機会も結構多いのに、きちんと系統的に教えられることがないというのは、いったいどういうことなんでしょうか???
まあ、とにかく、ピッチカートは結構形式や伝統にしばられない、いろんな奏法があるということです。そのために系統的に教えられることがない、ということなのかなあ。
(26)20回ルール(21 Jul 99)
「さらう」という言い方がありますが、人前で間違えることなく(もちろん止まることなく)最後まで弾けるようになるためには、いったいどれくらい練習すればいいのでしょうか?
ある本に、フーベルマンはつっかえることなく連続して20回弾けるようになるまで練習したということが書いてありました。この連続して20回ということは、例えば19回目でミスをした場合は、次回はまた1回目からのカウントになるということです。この本では、ヴィルトゥーソになるためには如何に多くの練習が必要であるか、という観点で書かれていましたが、私にはこの20という数字に何か特別な意味があるのではないかと感じました。恐らく昔からのヴァイオリニスト達の経験から生まれた数字なのではないかと思います。つまりこの「20回」が、練習の目安になると思います。ヴァイオリンに限らずどんな楽器でも、また楽器演奏に限らず何かを記憶するときに、この20回ルールに従ってトレーニングすれば自分のものにできる、すなわち「さらう」ことができると思います。
今度、ブラームスの1番のソロをやるときは、この20回ルールで練習しようと思います。
(24)弓が震える!誰か助けて〜!(24 May 99)
人前で弾くとき極度の緊張のせいで弓が震えてしまい、つい心の中でこう叫びたくなる、そういう経験はありませんか?−ぼくもどちらかというと上がり症で、こんな状態になることがよくあります。いや、上がり症という以前に体質的にいつも筋肉が少し震えているんですね。だから字は下手だし書道も苦手で嫌いです。昔、ヴァイオリニストに字の下手な人はいないというのを聞いて、「自分にはヴァイオリンを弾く才能がないんだあ!」と落胆したこともありました。しかし才能がないということを逆に素直に受け入れ、そんな自分がどうやったら人並みに弾けるようになるのか、という観点から研究を始めたところ、効果的な練習方法や演奏上のコツなどが分かってきて、今ではこんなエッセイ(?)も書けるようになったわけです(エラソ〜)。
話がちょっとそれてしまいましたが、やはりぼく以外にも緊張で弓が震えてしまう人は結構いると思います。そんな方に少しでも参考になれば幸いに思います。
弓が震えてしまう原因は、腕を曲げ伸ばす筋肉の緊張と弛緩がスムーズに行われないせいだと思います。それに腕を釣り上げている肩の上に乗っている筋肉(なんて言うのかなあ?)が必要以上に緊張して痙攣を起こしているようにも思います。しかしだからといってこれらの筋肉をもんだり叩いたりしても効果はないでしょう。問題は如何に不必要な力を抜き、精神的に平常心を保ち、かつ弓が震えにくいフォームにするか、ということだと思います。そこでぼくの場合の対策をまとめると以下の3点になります。
(1)姿勢を正す。背筋を真直ぐに伸ばし、胸をグッと張る。姿勢を正せば、余計なところに力が入らないようになる。あごには多少力を入れて楽器をしっかりと持った方がいいようです。もしも肩に力が入っているようでしたら、肩を一旦上に上げて、急激に脱力してストンと自由落下させるといいようです(これでわかるかなあ?)。
(2)ゆっくりと息を吐き、気持ちを落ち着かせる、リラックス、リラックス。前にどこかで書いたと思いますが、音を出している間は、基本的に息を吐き続けるようにするといいです。フレーズを歌うときもそうですね。フレーズの切れ目や休符で息を吸います。
(3)弓を持っている右手の構えをやや指を広げぎみに修正する。最初から指の間を広げて弓を持っているのであればいいのですが、アマチュアの多くの方は指がくっついているようです。少し広げた方が余計な力が抜けるように思います。
ところで、長野オリンピックのスピードスケートで大活躍した清水選手は、「どうしたら本番に緊張せずに実力を発揮できるのですか(というような内容の質問で、詳しくは覚えていない)?」という記者の質問に「指先に力を入れないことです!」という答えをしていました。そうか!それでスピードスケートの選手はみんなスタート位置に着く前に手をブラブラさせているのか!!−と妙に納得してしまいました。これはきっと楽器演奏にも言えるんじゃないかと思います。今度オケの本番で試してみようと思います。でも緊張のあまりそれすら忘れてしまうかも。
(23)1−3−4と1−2−4(14 May 99)
モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番のソロの出だしは、ラ−ド#−ミですよね。通常1−3−4(もちろん4は伸ばしです)で押さえますが、これはちょうどA-durの長三和音になっています。長三和音とは、一番下とまん中の間隔が長3度、まん中と一番上の間隔が短3度、また、短三和音はこの逆で一番下のとまん中の間隔が短3度、まん中と一番上の間隔が長3度になっている3つの音の組み合わせのことを言います。同じ弦の上で1−3−4で押さえると、ちょうど長三和音になります。同様に1−2−4で押さえると短三和音になります(和音といっても同時に音を出すことはできませんが)。もちろん弦やポジション位置に関係なく、この2つのパターンはどこでも使えます。分かりやすく言えば、1−3−4は長調で1−2−4は短調の形ということですね。ちなみに1で押さえた音が調の主音(つまりA-durであればA)のときは、1−3−4は主和音となるわけです。
曲のなかでは、この長三和音、短三和音の組み合わせが多く出てきますので、この1−3−4と1−2−4の手の形をマスターすると非常に便利に使えます。しかし多くの方はなぜかこのパターンをあまり使わず、途中で移弦したりポジションを変えたりしています。あるオケにトラで呼ばれていった時に、コンマスが「ここは1−3−4で取らずに、ちゃんとポジションを上がってくださいね。」と言っていたことがありました。1−3−4というのはどうもナマケモノかポジション移動の苦手な人がやるものだという意識があるようですね。
この1−3−4を使えると速いパッセージが弾けるようになったり、ポジション移動や移弦が減るのでフレーズを滑らかに歌うことができるようになります。さらにこの1−3−4パターンを発展させて、1でA線、3でD線、4でG線を押さえれば、PaganiniのCAPRICENの1番の出だしになります。また、17小節目で転調した所は1でA線、2でD線、4でG線を押さえればいいわけです。簡単ですね!
ですから、1−3−4、1−2−4パターンは怖がらず、恥ずかしがらず、堂々と使って手の形をしっかりマスターしておくべきだと思います。
(22)ビブラートは「ロッキングチェア」(9 Apr 99)
最近、複数の方から、「ビブラートがうまくかからないんですが、どのような練習をすればいいのでしょうか?」といった質問メールを頂きました(いつのまにかカウンセラーになってしまった!?)。実はぼく自身、それほどビブラートに執着していないんですよね。バロックのあまりビブラートを掛けない、透明感のある明るい響きにむしろ憧れているんですよ。
ビブラートが思うように掛からないというのにはいろいろ原因があると思います。その方の弾き方をじっくり観察しないと正しい対処方法はコメントできないように思います。それに、ビブラートは人によって全然やり方が違うし、ハイフェッツやシェリングのように速い人もいれば、オイストラフのように遅い人もいて、どれが正しくてどれが間違っている、なんていうこともできないと思います。俗にちりめんビブラートがよくないと言われることがありますが、ぼくは大いに結構、いいんじゃない、と思っています。フランチェスカッティもいいじゃない。そのプレイヤーの個性なんですから。
さて、どんな練習をすればいいのかということですが、その前に、どうやってビブラートを掛けるべきかということを先に考えてみたいと思います。
ビブラートは基準音から周期的に上下に音程を変位させるわけですが、指は弦の上をスルスル滑っているわけではないですよね。指先が木馬というかロッキングチェアのように弦の上を転がっているはずです。つまり、指先を左右に傾けるようにするべきだというのがぼくの意見です。ちなみに胡弓は指板がないので、指は弦の上を滑らせてビブラートを掛けていますね。
自分では力一杯手を動かしているのに全然ビブラートが掛かっていないという方が、よくいますよね。その方はまず、自分の指先がロッキングチェアしているかどうか確認してみてください。そして、次にどうやったら効率良く指先がロッキングチェアするか試行錯誤してみてください。ぼくの経験から言いますと、指はねかせているよりは立ちぎみで押さえていた方がいいでしょう。さらに指の全関節は常に自由にグラグラ動けるように楽にしていた方がいいでしょう。そして、ヴァイオリンをギターのように構えて、まずはゆっくりとしたスピードで(1往復1秒ぐらい)自分が理想とする掛け方でビブラートを掛けて、なるべく無駄な力は抜くようにして、慣れてきたら徐々にスピードアップすればいいと思います。
指先の肉が厚い人は、指の角度をちょっと変えるだけで、転がる量が大きいので幅広のビブラートを簡単にかけることができるでしょう(羨ましいですね)。逆に指が細く指先の肉が薄い人は指を傾ける角度を大きくしないと幅広く掛けられないでしょう。しかしそういう方は、ビブラートの速さにバリエーションを持たせるようにして、表情を変えるように工夫するとか、あるいは手首から先だけではなく、ひじから掛けるようにして、いろいろ工夫するのがいいと思います。ぼくの場合は幅広のビブラートやビブラートアクセントを付けるときはひじから掛ける割り合いが増えているようです(自分のことながら、無意識にやっているので、実はよく分かっていない。)。
(21)ポジションはいつ移動するべきか?(18 Nov 98)
小学校の時の音楽の授業で、四拍子は、強-弱-(中)強-弱、三拍子は、強-弱-弱、と教わりました。西洋音楽では、譜面上にアクセント記号が書いてなくとも、各小節の一拍目に必ずアクセントが着くことが基本のようです。
ところで、ポジション移動は、基本的にグリッサンドだとぼくは思います。これは、ガラミアンの「ポジション移動は船が錨を上げて移動して目的地で錨を下ろすようなもの」という言葉からもわかると思います。
しかし、グリッサンドということは、ポジション移動中に移動音が出てしまうことになり、場合によっては演奏上よくないこともあります。しかしポジション移動しなければ弾けないこともあるでしょうから、なんとかこのグリッサンドの移動音対策が必要になります。
そこで、4拍子であれば、通常、1拍目または3拍目にポジション移動をするようにします。つまり、1拍目にポジション移動するということは、その直前、すなわち前小節の最後の拍の終わりの方を犠牲にするということになります。同様に3拍目にポジション移動するということは、その直前、すなわち2拍目の終わりの方を犠牲にするということになります。小学校で教わった、弱拍の終わりの方を犠牲にするということです。この考えでいくと、最悪なのが、2拍目でポジション移動するということになります。これだと、各小節でもっとも強いアクセントが着くべき拍の終わりの方が「ふにゃ」という感じになり、なんともしまりがなくなります。逆にその効果を狙って弾くと西洋音楽じゃない、なんとなく日本的というか東洋的な感じがしますね。
曲によっては止むを得ず2拍目でポジション移動しなくてはならないような場合もあるでしょう。その場合は、ボーイングをダウン-アップの動きにした方が、アップ-ダウンよりもグリッサンドの移動音が出ないと思います。